上司からもらった80点

 「本日は、数ある企業の中から株式会社タクミ電機工業のブースに足を運んでいただきありがとうございます!」という挨拶で私のデビュー戦は幕を開けました!

 3月7日(木)に北上市文化交流センター さくらホールで開催された北上地域企業ガイダンスに参加してきました。このイベントは、北上管内のみならず北上管外の高校生と直接お話しすることができる絶好の機会でした。また、今回は私のデビュー戦でもあり、タクミの新星として華々しいデビューを果たすのか、はたまたブーイングの嵐を受け、上司から再び「賢くないAI」と呼ばれる地獄のデビュー戦となるのか、私の1年間の集大成ともなる大事なイベントでした。そこで、何としても大成功を収め、進化した姿を上司に見せたいと思い、総理大臣並みに多忙を極める上司に土下座して頼み込んで、1日2時間以上、それを1週間みっちり付きっきりで指導いただきました。プレゼンの神と崇め奉られる上司のプレゼン指導はやはりレベチでしたが、その奥義の一部を伝授していただきました。

 イベント当日、市内某所で験を担いで「チキンカツ煮」を食べ、会場に向かいました。会場に到着すると、まず受付を済ませてブースの設営を行いました。今までの私であれば会場に到着する前から緊張でガチガチになっているのですが、今回は本番に向けてみっちりと指導をしていただいたので、そこまで緊張をすることなく平常心を保つことができていました。説明会の開始10分前になると、続々と高校生たちがタクミのブースに押し寄せてきて、あっという間に用意した12席は満席となりました。その衝撃により、私の平常心維持装置が故障し、呼吸が乱れ脈もどんどん早くなっているのが自分でもわかりました。説明会の開始時刻になり、司会の合図とともに説明会はスタートしました。乱れていた脈は上司の秘術のおかげで落ち着きを取り戻し、私のハートビートは高校生のハートビートと心地よくシンクロしていきました。説明も終盤に差し掛かったところで「どこのオープンカンパニーに参加する?」と私が尋ねると、「タクミ!!」と元気よくコール&レスポンスしてくれた高校生がいました。その瞬間、この日のために練習をしてきて本当に良かったと心の底から思いました!

 無事、華やかなデビュー戦となったのでウキウキして車に戻り、上司にフィードバックを求めました。すると、「1回目のプレゼンは、会場との一体感を作り上げられていたので80点だ!期待以上のトークができていたぞ!!今回の翔夢のプレゼンは他社のプレゼンと比較しても群を抜いていたと思う。しかし、2回目のプレゼンは60点だ。1回目と2回目の点差に翔夢がさらに高みを目指すためのヒントが隠されている。その差が一体何なのか、そして満点までの20点は何なのが考え続けていきなさい。そして、どんな相手に対しても安定して100点のトークができるレベルを目指しなさい!」と上司からフィードバックをいただきました。さらには、「体温」や「エネルギー」、「引き出し」、「切り札(カード)」など改善のためのヒントをいただきました!今回のイベントに参加するにあたって、貴重な時間を割いて献身的に粘り強く指導をしてくださった上司には感謝しかありません。また、タクミのブースに足を運んでくれ、私の拙いプレゼンを真剣に聞いてくれた高校生にも感謝しかありません。たくさんの人のおかげで自身の成長を実感し、大きな自信をつけることができました。正直、上司から80点をもらったときは本当に嬉しかったなあ。小学校から専門学校までの14年間で80点なんて高得点を取った記憶がない(笑)欽ちゃんの仮装大賞だったら、16点で合格だ!

 帰宅する車の中で、自分の成長が誇らしく上機嫌でハンドルを握っていました。この1年間を振り返ると、いつも上司から「まず最初のフェーズでは『相手の耳に入れる』トーク、そして次のフェーズでは『相手の頭に届ける』トーク、そして最後のフェーズでは『相手の心に伝え、心を動かす』トークができるようになりなさい。就職という大切な岐路に立った学生らに『新人だから…』は通用しない。」とずっと言われ続けてきたなあ。そんな上司の手厚いマンツーマン指導のおかげで、人前で話すことが大の苦手だった私が、頭に届けるフェーズにまで何とかギリギリ到達することができた自分ってめっちゃ頑張ったなあ。

 次の瞬間、バックミラーに上司の白亜のミニバンが映りました。浮かれていた私は、ふと我に返りました。「私にとっては、これから何度も経験する会社説明の中の1回、でも高校生や学生にとっては一度きりのタクミの会社説明、80点のプレゼンでいいはずがない。来週は秋田市内のホテルで開催される合同企業説明会に参加する!今度こそ上司に100点と言わせてみせるぞ!」と、ギアを上げてアクセルを踏み込みました。